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グッバイ、リチャード!

存在することと生きることは似て非なるもの。

『グッバイ、リチャード!』


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ジョニー・デップが主演を務め、余命180日の大学教授が残された時間をありのままに生きることで人生の愛おしさを見いだしていく姿をユーモラスに描いたヒューマンドラマ。

美しい妻や素直な娘と何不自由ない暮らしを送る大学教授リチャードは、医師から突然の余命宣告を受ける。

追い打ちをかけるように妻から不倫を告白され、死を前に怖いものなしとなった彼は、残りの人生を自分のために謳歌することを決意。

ルールや立場に縛られない新しい生き方はこれまでにない喜びをリチャードに与え、そんな彼の自由な言動は周囲にも影響を及ぼしていくが……。

共演は「レイチェルの結婚」のローズマリー・デウィット、「ゾンビランド ダブルタップ」のゾーイ・ドゥイッチ、「ワンダーウーマン」のダニー・ヒューストン

ジョニーデップはこういったぶっ飛んだ役がホント似合います。

この作品自体は死とどういう風に向き合うか、生きるとはといったようなことが大筋にはあると思うんですが、実際の中身は結構ぶっ飛んだもの。

まあ人間が死と対峙した時って、実際のところぶっ飛んだことになるというか、吹っ切れることで本来やりたかったこと、やるべきだったことに気付くことは大いにあると思うんですよね。

その意味で本作の主人公リチャードはまさにそれを体現した感じ。

他にもこういったテーマの作品はあるものの、本作は画作りがかなり独特な間を生んでいるし、皮肉の効いた脚本も中々良い。

冒頭から重くなるんだろうな、と予感めいた死刑宣告に始まり、そこからどうなることかと思うのも開始数分のみ。

その後は家族のこと、仕事のこと、プライベートのこと、とにかく今まで送ってきた時間の過ごし方を徹底的に見直していく。

といっても具体的に見直すといった感じでは無く、思いついたら即実行といった感じ。

これが痛快で、誰もが絶対に思い当たる節があるはずのことばかりだからこそ、わかるわかると思ってしまう。

この先一年以内に死ぬとしたら自分はどうするだろうか、普段気になっていることの大半が気にならなくなったりするのだろうか。

そんなことを考えつつ、それこそが実際の自分だったり、考え方だったりするのだろうかと思うと理想像とは一体何なんだろうと思ってしまう。

先ほど書いた画作りの部分に関して言うと、まずその独特な構図が印象的。

左右対照に撮られたフィックスショットが妙に作られた印象を受け、それが人の生活の矛盾さを表現しているように思える。

人生という一見自由で流動的なように見えているものが、実は固定化された枠組みの中で、それこそ作り物のような世界観の中で過ごしているんじゃないかと思えてくる。

序盤に多い、枠の外から覗き込むようなショット、それが終盤には枠の外へのショットが増え、心の移り変わりが表現されているのかなと。

面白いもので、枠組みの中にいる時は変な目で見られていたような人も、その枠組みから抜け出すと、逆に羨望に変わる場合も出てくるんですよね。

全員がそうだとは思わないけど、そういう人が出てくるというのも事実だし、みな好きでその枠組みにはまっているわけでは無いと思うと、余計に奇妙に思えてくる。

人生は一度きりだし、死ぬ時に後悔するくらいならいました方がまし。作中に出てくるセリフでグッとくるものがいくつかあったんだけど、中でもリチャードがいう「存在していることと生きていることは違う」という類のセリフには響くものがあった。

確かに生きていれば存在はしているものの、それは決して自分の人生を生きているとは言えないし、本当にその通り、存在しているだけだと思う。ようするにただいるだけ。

考えてみれば仕事にしろ、遊びにしろ、仕方がないとか、何となくでやっていることがいかに多いことか。

好きじゃないとか、したくないとか、そういった次元の話ですらなく、何も疑問を持たず、なあなあで過ごすことがいかに無意味な事か。

皮肉なもので、それを知るのは恐らく誰もが死ぬ時なんじゃないかと思うと、一層自分の生き方を見つめ直したくなる。

思わぬところに良作がある。それは誰にとっての名作かもしれないし、自分だけの名作かもしれないが、それもまた観るという決断をしてこそ気付ける気付きなのかもしれない。

では。

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