控えめに言って最高。それは結果的に。
『ガンパウダー・ミルクシェイク』
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のカレン・ギランが主演を務め、犯罪組織に立ち向かう女たちの死闘を描いたバイオレンスアクション。
ネオンきらめくクライム・シティ。暗殺組織に所属する凄腕の殺し屋サムは、ターゲットの娘エミリーを匿ったせいで組織を追われ、命を狙われてしまう。
次々と送り込まれる刺客たちを蹴散らしながら夜の街を駆け抜けるサムは、かつて殺し屋だった3人の女たちが仕切る図書館に飛び込む。
女たちはジェーン・オースティンやバージニア・ウルフの名を冠した武器を手に、激しい戦いへと身を投じていく。
3人の図書館員を「スパイキッズ」シリーズのカーラ・グギーノ、「ブラックパンサー」のアンジェラ・バセット、「グリーン・デスティニー」のミシェル・ヨー、サムの母をテレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」のレナ・ヘディが演じた。
監督・脚本は「オオカミは嘘をつく」で注目を集めたイスラエル出身の鬼才ナボット・パプシャド。
ガンフーと呼ばれるガンアクション+カンフー映画って最近では結構ありますが、女性モノ、しかもシスターフッドあり、カーアクションあり、バイオレンスありというのは珍しい気がする。
ちなみに近作での個人的ガンフー上位作品は『ジョンウィックシリーズ』。
他にも作品内でのオマージュがえげつないほど出てくるところも含め、最高のエンターテイメントなんですよね。
それらをただのノスタルジックに描くのでは無く、新感覚の、今ならではの映像で見せてくるから、それはブチ上がるわけです。
正直言うと若干の予定調和や、やり過ぎ演出もあるなと思っていたし、アクション的な外連味重視なんかもちょっと乗れないかもなと思いながら観ていたんだけど、終わってみればやっぱり最高の思い出しかない。
鑑賞後に監督のインタビューなんかを読んで納得したのが、作品自体のフィクション性の話。
現実とリンクするような世界観をなるべく出さないことで、この作品内に没入し、それ自体を楽しんでほしい的なことが書かれていたんだけど、まさにその通り。それを読んでこの作り物感の正体が掴めたこともあって腑に落ちた。
出てくるキャラも、場所も、アクションも、そのどれもが一切のリミッター無し。
何年代なのか特定することもできないし、むしろゲームに近いような世界観。
アニメーションでそれをやらないところにこの作品の良さが出てるなと思う。どうしてもアニメーションでこう言った作品を描こうとすると平面的になってしまうというか、若干欲しいところではある現実感が皆無になってしまう気がするんですよね。
その意味で本作はちょうど良い感じ。ストーリー的にもあってないようなものの、予想を裏切るシーンが多くて、これはこうなりそうだなとか思っていると見事に裏切られる。その辺の捻り具合も中々に面白い。
個人的に一番痺れたのが駐車場でのカーチェイスシーン。しかも運転は8歳の子供。見ないとこの凄味は伝わらないと思うほど、色々とスゴすぎる。
映像的快楽もそうだし、カットの割り方含めめちゃくちゃスリリング。エンジン音やらの音の拾い方も良くて、抜けるようなサウンドが心地良い。
そんな音楽の使い方もB級感満載で良し。
サウンドに関してもオマージュ映画の要素を含めつつ、ブツ切りに繋いだり、かなりエモーショナルに使用したりと、そのチグハグさが映像と合っていてクセになる。
設定もクセになるものが多くて、ダイナーだったり、図書館だったり、ファームだったり、病院だったり。そのどれもがそそられる。やり過ぎなところもあるし、曖昧な設定もあるものの、それも含めてこの作品。
中でも、図書館員のミシェルリー演じるフローレンスは一番好きで、あの佇まいと雰囲気、最高にクールなんですよね。女性像の描き方もフェミニズムな感じにならず、マジでストイックな作りが共感できるかと。逆に全くそう言った要素を出さないところも、ありそうで無くて、とにかく痒い所に手が届く。
何も考えずに見れて、最高に楽しめちゃう。それでいて細部を見ればギミック満載。
オマージュ、仕掛け、あらゆるものを文字通りシェイクしたような作品なので、相当なストレス発散になるんじゃないでしょうか。
では。