未完全ではあるけど確実なデルトロ感。
『クロノス』
生ける機械によって吸血鬼となってしまった老人の姿を描くダーク・ファンタジー。
監督・脚本は「ミミック」でハリウッドに進出したギレルモ・デル・トロで、彼のメキシコ時代の処女作。
脚本はデル・トロ。撮影は「スポーン」のギレルモ・ナバロ。音楽はジャヴィア・アルバレズ。出演はアルゼンチンのベテラン俳優フェデリコ・ルッピ、「ロスト・チルドレン」のロン・パールマンほか。
初期作ということでそこまで期待はしていなかったんですが、仕上がりはほぼデルトロ。
よく初期作には監督のやりたいことが全部乗せされていると言いますが、本作もまさにそれ。
映像的であったり、作品的なディティールは、やはり初期といったところですが、造形物や美術などのディティールに関してはデルトロの十八番とするところで、相変わらずグロい。
冒頭のゴキブリシーンもですし、肉に刺さっていく針の感じや時計の中で動く謎なクリーチャーもそう。剥がれ落ちていく皮膚の感じなんかも気持ち悪くて、嫌いな人には絶対にオススメ出来ない。
デルトロの作家性ってそういったリアルでグロテスクな描写に対し、少女であるとかファンタジーの要素を取り入れるところが醍醐味なんじゃないかと思っているので、個人的にはむしろこう評価ポイント。
本作も物語の構成なんかはイマイチですし、全体的な面白さもイマイチ、それでも観終わった後には独特の余韻があるといいますか、人間が持つべき本質みたいなものに気付かせてくれるところはあるかと思います。
とりわけ本作では音楽がその一助に寄与していると思っていて、RPGなんかで使われるような牧歌的サウンドにどぎつい映像、そのアンバランス加減が中々良い。
まあ万人受けする監督では無いと思いますが、デルトロ作品が好きな方なら観ておいて損はない作品かと思います。