一人の人間は全ての人間の縮図。
『何もかも憂鬱な夜に』
中村文則さんの作品はいくつか読みましたが、これはやっぱり好き。
彼の作品は常に人間の内部を晒すものが多い気がしますが、本作は中でも確信をついている気がします。確信というと明確な答えが用意されている様に思いますが、本作はその逆、ぼんやりと浮き上がらせてくる感覚に近い。
人間の善悪もそうですし内面の葛藤もそう、本来相反する様に見えるものって意外に近い感覚だったりするわけで、それが本当に見事に表現されている気がする。
文体も読みやすく、ビジュアルのイメージも湿度を伴って感じ取れる。ご本人も後書きで書かれていたんですが、『水』を意識して書かれていたとのこと。その辺の滑り感という、独特の濡れ感が文字を通して伝わってくるところも作品性とマッチしていてとても良かった。
映画もそうですけど『雨と内省』って何となく好きなんですよね。悩むならちょっと暗めの雨の日がいいなというか、独特の雰囲気がある気がして。
全体を通して決して明るいテーマでもないしスカッとする様な展開も無い。それでも何かモヤッとしたものがあるなら是非読んでみてほしいと思う。折を見て読み返すたびにどんどん沁みてくる気がする、そんな作品でした。
22トラブルは
41なんで女
53俺は何でこんなことを
62恐らく、死刑
83俺は俺が行くべき
87俺は本来
138倫理や道徳から
138人生のキーワード
160考えることで
175命は使うもん
180それが素晴らしいから
184芸術作品は