本当のヒーローってこういうことなのかもしれない。
『スーパー!』
冴えない夫のフランクは、セクシーなドラッグディーラーの後を追って家を出てしまった妻を取り戻すため、自前のコスチュームを身にまとったお手製ヒーロー「クリムゾンボルト」に変身。
クレイジーな相棒ボルティーとともに危険地帯の犯罪に立ち向かう。
レイン・ウィルソン主演、エレン・ペイジ、リブ・タイラー、ケビン・ベーコンが共演するアクションコメディ。
監督は「ドーン・オブ・ザ・デッド」の脚本で注目され、SFホラー「スリザー」でデビューしたジェームズ・ガン。
色んなヒーロー映画があるし、色んなヒーローがいる中で、ここまで人間的というか、生々しいヒーローがいただろうか。
そもそもヒーローと呼べるのかすらわからないような描かれ方だし、ヒーローでは無いとも言える感じ。
本人としては確実にヒーローとして振る舞っているし、立ち上がれば誰しもヒーローな気もする。
誰しもが実人生において成功や幸福だと思える瞬間ってそんなに無いと思っていて、本作の主人公もまさにそう。むしろ2回しか成功体験が無いってどういうこと、と思うほどだし、その1回に関しては大したことですらない。
そんな主人公が唯一と言ってもいい大切なものを奪われた時にどうするか。その解決法も極めて人間的だし、何より描き方がコミック的で魅了される。
オープニングのコミック演出もテンションが上がるし、観ていてわくわくする。参考にしているヒーローもコミックからの引用なわけで、それを地で行くのはある意味凄すぎる。
ジェームズワン監督作品の良いところが『とにかく忖度の無い演出』だと思っていて、痛そうな場面は痛そうに、死ぬ場面でもそう、当たり前だけど人生にはやり直しがきかないし、後悔もやり直せない。それをそのまま見せるし、目を背けない。これが共感が持てるところだと思うんですよね。
あと音楽の使い方やギャグセンスも抜群で、オープニング曲のローファイでパンキッシュなサウンドがツボ。
笑えるけど痛い、みたいな演出が多々あって、その挟み方も絶妙なんですよね。
そんな本作の一番のお気に入りはラスト。あの終わり方、好みなんですよね。今までのカタルシスを全て開放するような、それでいて説明的になり過ぎてない感じ。
通ってきた過去も含めて、今を生き、未来がある。あの感じが本当に清々しくて好きでした。
グロいシーンなどもあるので万人受けはしないでしょうし、内容的にもマジでアホっぽい。それでも掴まれる人は掴まれる映画だと思います。個人的にはかなりツボでした。