無償こそが真なのかも。
「未来世紀ブラジル」のテリー・ギリアム監督によるファンタジックなヒューマンコメディ。
アーサー王伝説に登場する漁夫王(フィッシャー・キング)のエピソードをモチーフに、元人気DJとホームレスの出会いが互いの人生を変えていく様子を描く。
過激なトークで人気を集める売れっ子DJジャック。ある日、彼の発言がきっかけで銃乱射事件が起き、地位も名誉も失ってしまう。
3年後、すっかり落ちぶれたジャックは、暴漢に襲われたところをホームレスのパリーに助けられる。パリーが3年前の事件で妻を亡くしたことを知ったジャックは彼の力になりたいと考え、2人は奇妙な友情で結ばれていく。
ジャックをジェフ・ブリッジス、パリーをロビン・ウィリアムズがそれぞれ演じた。1992年・第64回アカデミー賞で助演女優賞(マーセデス・ルール)、1991年・ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞。
ファンタジックなのに現実的で一番身に染みた作品だったかもしれません。
『人生とは何なのか』
年々その疑問は深まるばかりだし、考えもしなかったことを考えるようになってきたと感じている昨今。
若い頃であればそれこそ本作に出てくるジャックのような社会的成功者、富も名声もあり、綺麗ない彼女と悠々自適に生活するような生活こそが成功だし、目指すべきことだと無意識的に思っていた。
それが本作ではひょんなことから転落していき、というか自分で気づいてしまうというか、堕落していく。その気付いてしまうというのも面白い点だし、人生はその連続の中で育まれると思うとある種ゾッとする。
それから起きる出来事もやはりギリアムらしく、ワケがわからないことや人の連続。
ただ本作で出てくる謎めいたことに関しては作品群の中でも一番現実とのリンクが成されているし、そこまで荒唐無稽でも無い。
作中でのフックアップされるセリフや出来事も多く、「お金で贖罪を出来たらどれだけいいか」「ただ愛していただけ」「昔はちゃんとした大学教授だった」「ただ水をあげただけ」
何も感じずに通過してしまえばそれだけのことだけど、人生にはそれぞれの転機や気付きがあるはず。
どう解釈するのも本人の自由だし、どう行動するかも本人の自由。
他人には不幸せに見えるかもしれないけど、自分がどう感じるかが本当に重要な事であって、さらに言えばそれすらも真実かもわからないというのが本当のところなのかもしれないという問いが本作には含まれている気がして、そこが最高に刺さってくる。
自分を保つために自分に付いている嘘や壁をつくることが最低限の自分の利己性を保っている場合もあるわけで、それは決して正しくないとは知りながらも、そうするしか手立てがないのかもしれない。
心の緩急を理解し自分なりの共存を出来ることが幸せなのかもしれないと思わされる。
親から子への無償の愛とはよく言ったもので、『無償』こそが万人が持つべき感覚だと考えると、本作に出てくる様々な無償がクリアされ、視覚的にクリアになってくる。
やっぱり色々なものが溢れすぎた今だからこそ、自分なりのふるいにかけることが必要なんだろうな改めて思わされた。
それにしてもロビンウィリアムズとジェフブリッジズのコンビは見ていて好きでした。
奇しくも、ロビンウィリアムズは2014年に63歳という若さで自殺してしまいますが、それもまた本人にしかわからないことが多分にあるのかと思うと、人生は一筋縄ではいかないものだと皮肉めいた感覚を持ってしまうところであります。