ランブルフィッシュ

見たいものと見えているもの。

ポスター画像

Rumble Fish (Francis Ford Coppola, 1983) Theatrical Trailer

不良少女グループのリーダーである兄と、その兄を慕う弟の危うい青春の日々を描く。

製作はフレッド・ルースとダグ・クレイボーン、エグゼクティヴ・プロデューサー・監督は「アウトサイダー」のフランシス・フォード・コッポラ。Ｓ・Ｅ・ヒントンの原作を基にヒントンとコッポラが脚色。

撮影はスティーブン・Ｈ・ブラム、音楽はスチュワート・コープランド、編集はバリー・マルキン、プロダクション・デザイナーはディーン・タヴォラリスが担当。出演はマット・ディロン、ミッキー・ローク、ダイアン・レイン、デニス・ホッパー、ヴィンセント・スパーノ、ダイアナ・スカーウィッドなど。

日本版字幕は金由文夫。テクニカラー＜モノクロ＝パートカラー＞、ビスタサイズ。1983年作品。

モノクロ映画って正直映画館で観るとか、何かしらの工夫をしないと集中力が続かないものが多い中で、本作は冒頭から最後まで全く飽きずに観られました。

その理由がまず音楽。予告でもそうだったんですがサントラ曲『West Tulsa Story』に惹きつけられます。

Rumble Fish OST: West Tulsa Story (Stewart Copeland)

何とも言えない金属音のループ感、病みつきになるテンポが印象的なサウンド。音楽を担当しているのがポリスのスチュワート・コープランドということでこういったサウンドなんでしょうが、見事に作品のアンニュイ感にハマっていた気がします。

そして映像表現の面白さ。モノクロゆえの陰影の見せ方であったり、タイムラプスを使用した時間表現、ローアングルからの臨場感ある煽りなんかも面白く、観ていて終始飽きません。

特に決闘シーンでの迫力と臨場感足るや。モノクロじゃないとあそこまでの雰囲気は出ないんじゃないかと思う感じで、メチャクチャカッコ良かった。

一部カラー箇所はあるんですが、それには意味があり、その辺もかなり作品の雰囲気に寄与しているかと。

物語自体は至って単純で、喧嘩が強く、カッコいい兄貴に憧れ、近づこうとするものの。

そんな感じで一見すると清々しい青春ムービーに聞こえるかもしれないんですが、ある意味正解である意味不正解。

大枠で観るとそのプロットは合っているんですが、細かく見ていくと圧倒的に深い。この兄の視点が今の自分で、弟の視点が若かりし頃の自分と考えてみると本当に色々と当てはまる気がします。

そしてそれが今だからわかる。若気の至りというか、若い頃は強がったり、悪ぶったりするものだけど、それが本当の強さでも悪さでも無いということに気付くわけだし、それが本質的なカッコ良さでは無いんだと気付くわけで。

同時に世界の狭さ、逆に世界の広さを知っていくことで違った角度から物事が見えるようになっていく。それをわかりやすく表現したのが本作ランブルフィッシュなんじゃないかと思う。

兄弟の父親が言っていた「お前の兄は気違いなわけじゃない、見えているものが違うだけだ」というセリフもそう。見え方や見方が一辺倒な青年時代と違い、大人になるにつれ多面的に物事を見ることが出来るようになってくる。もちろん全員にそれが出来るわけでは無いんだろうけどそうなることで『違う』ということの良し悪しや必然性を知ることになる。もし、みんな同じ考えで同じ格好をして、同じものを持っていたら。個性というものも無いし、違いというものも生まれない。それが良いのかと問われればそういうことではないわけで。だとしたらと考えると、やはり違いがあるから面白いんだと思わされる。

そういったことを抜きにしても、冒頭で述べた音楽とのマッチングであったり、ファッションを楽しむことでも十分過ぎる。

個人的にラスティのタンクトップとレザーの合わせだったり、モーターサークルボーイのジャケットの着方（襟をあえて立てる）だったりと、スタイルがファッションを凌駕する感じが前面に出ていてカッコ良かった。

煙草もかなりのシーンに出てくるけど、これまたカッコいい。

とりわけミッキーローク演じるモーターサイクルボーイのあの佇まい。ヘアスタイルや存在感含め、全盛期の彼はやはりカッコ良かったんだと改めて痛感しました。

薬物が出てきたせいで組がダメになり、喧嘩が減り、何かが削げ落ちた。本編で述べられていることが現代においてもそうだと思っていて、希薄な情報や上辺だけのスタイルによってスタイルが失われた。そういう気づきと共に、もう一度観返してみるのもまた面白いかもしれない。