わからない、それもまた映画。
『TENET』
ノーラン最新作『TENET テネット』US本予告2020年9月18日 ─ 時間を戻せ、世界を救え
「ダークナイト」3部作や「インセプション」「インターステラー」など数々の話題作を送り出してきた鬼才クリストファー・ノーラン監督によるオリジナル脚本のアクションサスペンス超大作。
「現在から未来に進む“時間のルール”から脱出する」というミッションを課せられた主人公が、第3次世界大戦に伴う人類滅亡の危機に立ち向かう姿を描く。
主演は名優デンゼル・ワシントンの息子で、スパイク・リー監督がアカデミー脚色賞を受賞した「ブラック・クランズマン」で映画初主演を務めたジョン・デビッド・ワシントン。共演はロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、アーロン・テイラー=ジョンソンのほか、「ダンケルク」に続いてノーラン作品に参加となったケネス・ブラナー、そしてノーラン作品に欠かせないマイケル・ケインら。
撮影のホイテ・バン・ホイテマ、美術のネイサン・クローリーなど、スタッフも過去にノーラン作品に参加してきた実力派が集い、音楽は「ブラックパンサー」でアカデミー賞を受賞したルドウィグ・ゴランソンがノーラン作品に初参加。
正直、初見でわかる人がいるのかと思ってしまうほど、ほとんど理解できずに終わりました。
それなりに映画を観ていると思う中で、これほどまでにわからない映画があるのかと思ってしまうほど、具体性が頭に入ってこない。
冒頭から謎のオペラホール襲撃シーン。マスクをしていることもあって、誰が主人公なのかもわからず、その目的も謎。ただただ、映像の生々しさと臨場感を感じながら、ノーランらしさを堪能するだけ。
ノーランといえばリアル重視の監督で、基本的には3D等の技術を使わず、リアルにその事象を起こす。本作での飛行機が突っ込むシーンはまさにそれが顕著に出ており、あの重厚感たるや、物質的な重量があってこそ見せれるシーンなんじゃないでしょうか。そういったことも含めて、劇場に足を運ぶことを前提とした体験としての映画を作ることが顕著な監督なので、その辺の臨場感は至極の映画体験。
そんなことを考えているうちにも物語は進み、その全てが何となく理解できるけど、なんとなくわからない。自分の中で微妙に噛み合わない中で進行する物語が続き、否応なしにそれらを体験させられる。
前半はそれでも理解が出来たものの、後半に入るとその理解が追い付かなくなってくる。
逆行とは、主人公の目的は、ニールとは、TENETとは、アルゴリズムとは、無知こそ武器とは。
それらの謎は最終的にある程度の解釈を持って理解できるわけだけど、正直映像的に腑に落ちた理解をするのは難しい気がした。
まあ単純に人間の頭で知覚できる時間間隔と異なる状況を映像的に一緒くたにしているわけで、それを完全に理解するのは無理というもの。
まさに劇中で出てくる「考えるな、感じろ」の世界。
個人的に一番謎だったのが終盤での青と赤に分かれての戦いの場面。逆行と順行で戦いは成立するのか。そもそも目的は。全てが謎過ぎて、謎でした。
観終わった後にふと感じた、主人公ですら自分の状況をいまいち理解できていなかったという状況。それって視聴者が理解できないのは自然な、むしろ狙った映画の作りなんじゃないかとすら思ってきたところで本作がスッと入ってきた気がした。
本作ほど、誰かと話し、共有し、考察を掘りたいと思わせる作品は無いんじゃないでしょうか。
ノーラン作品に必ず付いて回る『時間』という概念。それをストレートに描き、視聴者を混乱へと陥れる彼の作品作りは好き嫌いはあれど、素晴らしい試みなんじゃないか改めて思います。
まずはとにかく劇場へ。そこからが本作の楽しみの始まりな気がします。