男の美学を観た。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」
マカロニ・ウエスタンで知られるイタリアの巨匠セルジオ・レオーネが1968年に手がけた作品で、日本では当時「ウエスタン」の邦題で短縮版が公開された一作。
「荒野の用心棒」(64)、「夕陽のガンマン」(65)、「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」(66)で3年連続イタリア年間興行収入ナンバーワンを記録したレオーネが、方向性を大きく変え、自らの作家性を強く打ち出した野心作。
大陸横断鉄道の敷設により新たな文明の波が押し寄せていた西部開拓期を舞台に、女性主人公の目を通して、移り変わる時代とともに滅びゆくガンマンたちの落日を描いた。
ニューオーリンズから西部に嫁いできた元高級娼婦のジルは、何者かに家族全員を殺され、広大な荒地の相続人となる。そして、莫大な価値を秘めたその土地の利権をめぐり、殺し屋や強盗団、謎のガンマンらが繰り広げる争いに巻き込まれていく。
初公開当時、ヨーロッパでは高い評価を得たが、アメリカでは理解されずにオリジナル版から20分短縮されて興行的にも惨敗。日本ではアメリカ版からさらにカットされた2時間21分の短縮版が「ウエスタン」の邦題で公開された。
初公開から50年を経た、レオーネ生誕90年・没後30年にもあたる2019年、原題の英訳「Once Upon a Time in the West」をそのまま訳した「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」に邦題をあらため、2時間45分のオリジナル版が劇場初公開される。
冒頭から固唾を飲むスタート。
何が起きているわけでも無いんだけれど、空気感がそうさせるのか、一音一音ただただ聴き入り、映像に集中する。
とにかく無音の使い方が秀逸で、それ故に何度も引き付けられた。
音もそうだが、それ以上に感じたのがその生々しさ。
以前の「恐怖の報酬」でもそうだったが、昔の作品を映画館で観ると、本当に生々しい。加えて本作の監督であるレオーネはアップのカットを多用するため、余計にそう感じたのかもしれないが。
西部劇やマカロニウエスタン映画を観ていると毎回思うけど、本当に男って感じがするというか、とにかく理屈抜きにカッコいいんですよね。それも見た目のカッコ良さを超えた、滲み出る存在としてのカッコ良さみたいなのがたまらないです。
やっぱそこにはスタイルというか生き様があって、それを観る為にそういった映画を観ていると言っても良い程です。
本作も多分に漏れず、そういった感覚で観ていたんですが、終盤のシーンでそれは違ったかもしれないと思わされました。
それがフランクと決闘のシーン。
ロングショットからのアップで撮られるシーンの緊迫感はさすがの一言でしたが、その時、何とも言えない感覚に陥りました。
人はなぜ生きるのか。男らしさとは。生きがいとは。
そんなことに対する、まとまるはずのない考えが一つの回答として浮かんできたのです。
それが
「男にはやらねばならぬ時がある」
という至極単純なこと。
理由とか目的とかそんなことはどうでもよくて、ただ単にやらなきゃいけないと感じることを即座に行う。多くの人はそういった状況を作ること自体を無意識のうちに避けていたり、直視しなかったりすることで「そんな機会は無いよ」と一蹴してしまうんでしょうが本当はそれを見て見ぬふりしているだけ。そうした方が苦痛は少ないですし、嫌なことも減らせるからそう思いたいんです。
ただその状況に向き合い、それらを見せられた時、生き様としての滲み出るカッコ良さだったり、生きがいを見出せるんじゃないでしょうか。
余談ですが個人的には本作の中でシャイエンがそういった意味でのカッコ良さを一番体現していた気がします。率いていた集団のファッションも然ることながら、それ以上にしっかりとした信頼と信念。終盤でのジルに対する対応なんかも含めて最高にカッコ良かったです。
それにしてもモリコーネの音楽は本当に心地良いですね。
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それをあの映画館という空間で聴けるだけでも感謝でした。しかもレオーネの作品で。観れるうちにこういった映画は映画館で観るべきだなと改めて思わされました。