言葉の力を感じた。
「イルポスティーノ」
イタリア、ナポリに浮かぶ小さな島に、チリ政府に追われた世界的詩人パブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)が亡命し、滞在することとなった。彼だけに郵便を届ける配達人となった村の貧しい青年マリオ(マッシモ・トロイージ)は、ネルーダとの交流の中で、少しずつ詩の世界に触れ、恋を知るのだった。美しい風景の中で切ない愛と友情を描く感動作。
イタリアのこの感じって昔から好きなんですよね。
最近の疲れが出て、癒しとしての映画を観たいと思い、ジャケットの雰囲気でチョイス。
ストーリーは政治的なシビアさや人生としての過酷さなんかもありつつ、情景と音楽が素晴らしい。
人はなぜノスタルジーを感じるのか。
それを感覚的に伝える何かが本作にはあると思った。劇中に出てくるネルーダとマリオのやり取りが実に他愛も無いんだけど、凄くリアルで、純粋さに満ちていて、それでいて胸に突き刺さる言葉のやり取りを交わすんですよ。
序盤でマリオがネルーダの詩について解説を求めた時、ルイーダが「君が読んだ詩を別の言葉では表現できない」と言うんですが、それが刺さりました。芸術って解説や正解を求めがちですが、その人が感じた感覚は十人十色であって、答えなんか存在しない。人間って不確定とか未知な事って不安に直結してしまうからそういった感覚をなるべく解決しようとしてしまう。でもそれはある種の余白というか解釈のゆとりみたいなものを自分で消してしまっていて、それが心の余白すら奪ってしまう。そう考えたときにこの言葉の深さを自分なりに解釈して胸に響いた。
それ以外にもいくつも素晴らしい言葉の数々が登場しますが本質は一つ。
それぞれが別々であって一緒じゃなくても良い。自ら考え、発することを止めなければ。
そう思った時、人生の見えない視界が広がった気すらした。
本作は音楽の良さも秀逸なんですが、とにかく良いの一言。風景、シチュエーション、時代性、全てとのマッチングが最高で映像やストーリーを邪魔せず、それでいて主役級に印象に残る。音楽を手掛けたルイス・バカロフ、最高です。
- アーティスト: サントラ,ルイス・エンリケス・バカロフ,ローマ交響楽団,カルロス・ガルデル
- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 1996/03/23
- メディア: CD
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とにかく風景と音楽、言葉の調和が素晴らしい映画なので、気負わずリラックスして観れるところも非常に魅力的な作品です。
余談ですが、主演のマッシモトロイージはこの映画の撮影から12時間後に亡くなったそうです。それを踏まえてラストを観ると更に別の感情も生まれてきそうです。