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探幽訪真:深く、自由に、偏りなく潜る

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『アウターガンダム』はなぜ今読むべきか──AIが暴く一年戦争の裏側

『アウターガンダム (電撃コミックス)』

1年戦争を舞台に繰り広げられる、隠されたもうひとつの「ガンダム」の物語。人の手によらず、AIによって機動する封印された“ゼファーガンダム“。戦いの中でゼファーは学び、そして大いなる力を発揮してゆく。松浦まさふみの描く伝説のガンダムコミック、25年の歳月を経て堂々の復活

当時は今よりも制約を受けず、ガンダムを描けた時代。

発売が2017年ということもあり、その発想の自由さと考証のこだわりというはこの時代ならではと思ってしまう。

アウターガンダムという名称もアムロやホワイトベースの外側で起きていた戦争を描くという意味であり、08小隊やサンダーボルトなどといった1年戦争の外伝的物語となっている。

 

技術者目線、開発者目線からの物語が軸となっているのが興味深く、人為的な操作無しに駆動できるという仕組みも斬新な視点。

これは今となってはAiの先駆けではともとれるような設定であり、無人戦闘機の人型と捉えると最早笑ってもいられない。

あくまでもガンダムというとニュータイプを軸に話が進むものがほとんどで、そこが醍醐味とも言えるところをあえて削ぎ落し、新たな目線で語るという構成。

欄外への注釈の多さも時代を感じるところで、知らずにどんどん語られていくガンダムのスタイルからすると、こうした説明は攻殻機動隊などのようなメカ系には読んでいく一助にはなる。

松浦まさふみ氏の作画も今にしてみてもカッコ良く、「リアル・ロボットとしてのガンダム」を視覚的に突き詰めたものであり、後のMSデザインやガンダム作品のヴィジュアルイメージにも小さくない影響を与えたも言える気がする。

人物とメカの対比がそのまま作品におけるドラマ性に寄与しており、リアリティラインを底上げする役割としてメカの精密な描写が見魅力的に映る。

登場するMSゼファーガンダムも無骨でカッコいいんですよね。

RX-78ガンダムを元に作られた試作機であって、ゴツさが際立つ。でもこれが良い。

RX79EX-1 ゼファーガンダム|@buddyo_WBさんのガンプラ作品|GUNSTA(ガンスタ)

物語自体も骨太で硬派な展開となっており、盛り上がるというよりもじっくりと向き合うタイプの重厚な作品に仕上がっている。

ガンダム作品にを大別するとエンタメ要素強めな作品群と内省的な作品群がに分けられる気がしていて、その意味で言うと本著は内省的なテーマを感じられるようなテイスト。

別角度から観ることで1年戦争にも深みが出ますし、それにより解釈や理解の幅が広がるというのは立体的に作品世界に没入するという意味でも興味深く読めるのではないでしょうか。

では。

『アーセナルvsマンチェスターシティ』“まだ終わっていない”と信じる理由

惜しいシーンは何度もあり、熱量も申し分無し、普段ならそれだけでも最高の試合に感謝したいところだが、この試合は本当に勝ちたかった。

『アーセナルvsマンチェスターシティ』

Arsenal Scores, Stats and Highlights - ESPN (IN)

14エゼのターン方向さすが
39モスケこんなクロスも蹴れるのか
41インカピエ対応からの身体の向きの変え方絶妙

61モスケもドク相手に落ち着いてる
63サリバ、ハーランド相手に迅速な潰し

まずはスタメンから。

DF陣は安定を求めてのオールCBチョイス、ライス、スビは言わずもがな、ウーデ復帰、驚きはギョケでなくハヴァさん、左ウイングにエゼ。

エゼのこの位置での起用は予想外でしたが面白い試みだったのではないでしょうか。

インサイドでの仕事、バイタル付近でのエゼによる魔法というのは特別なものがありますし、最近は試合もコンスタントに出てることでコンディションも悪く無かった。

実際、何度もワンタッチでのプレーには魅せられ、惜しいシーンもありました。

彼がボールを持つと0→100でスイッチが入る時があり、あのシュートシーンなどは最たる例。ボールを受けてのターンなども同様。

ハヴァさんも中盤に降りての役割からフィニッシュまで。

この試合では比較的前線でのプレーが多く、シュートも惜しいのが何本か。よく走ってましたよ。

まあ序盤からチーム全体がかなりのハイプレスでしたし、気合も相当入っていたのでこのようなヒートになったのでしょう。

それにしても良い試合でしたよ。

アーセナルもシティも全てを掛けた攻防の数々。

どのポジションを見てもアツさしかない。

久々に良い時のアーセナルの姿勢を見ましたし、選手の気迫、監督の熱意、高ぶりによるミスに始まり、ゴールに迫る圧。

全員が凄まじい気迫に満ち、プレス強度も半端じゃなかった。

ディフェンスアクションも両チーム上位にアーセナルが顔を揃え、上位で無くともビッグガブとハーランドの激闘、ウーデの猛追、ハヴァさんの奔走、マドゥエケの仕掛け。全員エグかったし負けてなかった。

運も実力のうちというのはその通り、ゴールが決まらなかったのも運のうちというのであれば致し方ない。

実際、シティのゴールはどれも流れの中から生まれたパーフェクトなもので、対するアーセナルのゴールは1ゴールとしては変わりは無いものの、ハヴァさんのプレスの賜物というもの。

どちらがよりゴールらしいゴールかと言えば正直シティに軍配が挙がるわけで、惜しくても勝てなければ勝利は手繰り寄せられない。

試合後沈みもしましたし、「これで優勝は厳しいかもしれない」「CLも怪しい」などと思ってしまったのも事実。

でもこれだけグーナーをやってきたのはこんなことでめげることでは無いという諦めの悪さ。

奇跡はたまにしか起きないから奇跡なわけで、それを信じられなければ当然奇跡は起きない。

この二人を見て、諦めるわけにはいかないと心の底から思わされた次第です。

観ているこちらも熱が入り、レビューというよりは感想要素が強いのですが、それもまたサッカー、というよりこういうサッカーを本当は望んでいる。分析よりも感情を呼び覚ませ。

まだ終わったわけでは無い。

ではまた。

整いを捨てて、静けさを選ぶ──『モダン湯治 おんりーゆー』という逃避行

最近は専ら手近なところに行っているだけだったのですが、以前から一緒に行っていた友人がここは激推だと行っていたサウナへ行くことに。

『モダン湯治 おんりーゆー』

神奈川県南足柄市の日帰り温泉「modern湯治おんりーゆー」12月21日リニューアルオープン!新設サウナ「Ruska sauna」が登場 -  フロサウナ|フロとサウナの専門メディア

www.ashigara-only-you.com

まずは一汗かいてということでの花見ラン。

秦野市カルチャーパークというところに行ったのですが、中々良い。

神奈川県秦野市にある都市公園のようで、日本の都市公園100選に選定されている。旧名称は秦野中央運動公園とのこと。

朝ランを友人とするというのもすこぶる気持が良いもので。

軽く走った後、本命の「モダン湯治 おんりーゆー」へ。

神奈川県日帰り温泉 美肌の湯 あしがらの温泉「おんりーゆー」【公式】

www.ashigara-only-you.com

住まいからも遠くなく、箱根や湯河原といった近隣人気温泉地とも一線を画す。

何よりいる人の層が大人であり、静かな時を過ごすのに非常に適した環境。

まず、佇まいからして「これはやる」と思わせ、入館後、風呂までの導線、風呂からの景観、浴槽数、サウナ数、全てにおいて丁度良く、素晴らしい。

最近のサウナだとTVがデフォルトで付いているところも多いわけですが、この外に設置されているログハウス的なるサウナにあるのは窓を通して見える木々や河川のみ。

ロウリュもセルフで可能となっており、店員も5名程度とコンパクトだがそれでいい。

静かな山間の中、自然を眺め、静かに時を過ごす。

外気浴スペースも多く、そこでもまた鳥のさえずりや川の流れる音、風などを受けながら極上のひと時を堪能できる。

基本露天メインで入ったのだが、湯温の異なる浴槽が2つあり、その広さ、深さも絶妙で良い。

とにかく、自然の中でただスローに流れる時間を堪能する。

これに重きをおいた雰囲気を感じられ、確実に再訪を予感させる。

アメニティの充実ぶりもあり、基本DHCのもので揃えられており、至るところに箱根水系の地下200mの深さからくみ上げた森の天然水「きんらん水」という水が出るようになっており、これがまた冷たく美味い。

風呂を出た後の休憩スペースも外気浴同様、外に設置された景観の良い場所が多数用意され、どの状況下でも安らげる。

食事も地産地消のメニューが豊富に見られ、トータルで満足のいく時間を過ごせるようになっている。

まあ、アラフォーの身としては色々動くよりもこうした全てが一箇所で済むというのも年々ありがたく感じるところですし、何よりここでのそれは全てのクオリティが高く、満足感が異常なのでということもあるのでしょうが。

あぁ、書いているだけで再訪したくなってきた。

観光地のような人混みを避け、ただただ安らぎのショートトリップをしたい時には是非訪れたいものです。

では。

『アーセナルvsスポルディング〜UEFAチャンピオンズリーグ ベスト8 2nd leg~』なぜ決まらない?15本1枠が暴く“支配の空虚”

『アーセナルvsスポルディング〜UEFAチャンピオンズリーグ ベスト8 2nd leg~』

Lo Sporting spaventa l'Arsenal, Arteta in semifinale – FootballPress

6さっきからライスのポジション取りが抜群なんだよな
16サリバ落ち着いた対応ナイス
19マドゥの受ける位置ええ
21マルティの素晴らしいプレスバック
28エゼ魔法発動
34絶品エゼのワンタッチ
38スビも変幻自在の飛び出しええで

最終的な結果には満足だが、試合としての結果は如何とも。

ここ最近、本当に厳しい戦いが続いている。

何しろ得点が入らない。

チーム自体の強度、ビルドアップ、仕掛け、決定力、全てにおいて今一つ噛み合わず、さらには怪我人も続出しというのは相互に関係しているはずで、やはり疲労なのでしょうか。

そんなスタメン。エゼ、インカピエ復帰。モスケライン。

この試合も強度高かったですね。

特に後半中盤以降の怒涛のアーセナルペースというのは気迫を感じましたが、それでも決定打には至らず。

シュート数からもその辺は顕著でオンターゲットが1/15。

シュート位置としては悪くないのですが決まらない。決めきれないのか決まらないのか。相手GKセーブが1ということを考えると、決めきれないというのが正直なところなのか。

一つ収穫があるとすればこの試合は全員の熱量は悪くなかった。

序盤から意志は感じましたし、終盤にかけてもその熱意は見えていた。諦めている選手などは一人もいなかった。

その中心にいたのがライスであり、スビ。

この二人の運動量、ポジショニング、スキルは半端じゃなく、効いていたのは確かなところ。

ライスは通常が異常ですが、スビもこの試合での攻撃参加率はかなり高かったのではないでしょうか。ボックス内へのランも多かったですし。その的確さといったら。

あとはマドゥエケの仕掛けもかなり効いていましたね。前節に引き続きアラウホとやりあっており、この試合ではかなり押し込んでいた印象。

キレもあったの怪我が心配ですが、試合後歩いていたのを見るとそこまででは無いのかと。

モスケラも悪くなかったですし、エゼも数回魔法を見せてくれた。

個人的MOMはインカピエですかね。

デュエルも奮闘し、とにかく固い。フィジカルも申し分なく、攻撃参加もしてあの強度。安心ありますよ。

ですが勝てなかった。

次が運命のシティ戦ということを考えると不安要素はてんこ盛り。

サーモンも本調子では無さそう(足にボールが付いていないのが顕著)でしたし、マドゥエケも怪我が気になる。スビとライスもこの試合でフル稼働しており、交代のオプションも減っている。

ですが、勝たねばならぬ。信じております。

では。

『ハムネット』は“美しすぎる悲劇”だ──クロエ・ジャオとの抜群の相性も魅力

『ハムネット』

ポスター画像


www.youtube.com

「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督が、シェイクスピアの名作戯曲「ハムレット」の誕生の背景にあった悲劇と愛の物語を、フィクションを交えながら描いたドラマ。北アイルランドの作家マギー・オファーレルが2020年に発表し、英女性小説賞と全米批評家協会賞を受賞した同名小説を映画化した。

16世紀イングランドの小さな村。薬草の知識を持ち不思議な力を宿したアグネス・シェイクスピアは、作家としてロンドンで活動する夫ウィリアムが不在のため、3人の子どもたちと暮らしている。ペスト禍のなかで子どもたちを守り奮闘するアグネスだったが、不運にも11歳の息子ハムネットが命を落とし、家族は深い悲しみに包まれる。

「ウーマン・トーキング 私たちの選択」のジェシー・バックリーがアグネス、「aftersun アフターサン」のポール・メスカルがウィリアムを演じ、「奇跡の海」のエミリー・ワトソン、「ブルータリスト」のジョー・アルウィンが共演。スティーブン・スピルバーグとサム・メンデスが製作に名を連ねた。第98回アカデミー賞では作品賞ほか計8部門にノミネートされ、ジェシー・バックリーが主演女優賞を受賞した。

クロエ・ジャオ監督作品ということで観に行ったのですが、相変わらず映像表現が素晴らしい。

美しい景観と質感を伴ったグレーディング。

現代でなく、あのような時代だからこそいっそう引き立つというのもあって、とにかく終始美しい。

過去作もですが、映像を美しく捉え、表現するのが上手いんですよね。

そんな本作、シェイクスピアの戯曲『ハムレット』を元にしているわけですが、タイトルは『ハムネット』。

冒頭にも書かれているのですが、解釈としては当時どちらでも呼び名としては構わないというのがあったようで。

そもそも、シェイクスピア、名前だけは知っているものの、どんな人物で、なぜ有名なのかを全く知らない。

ということでその辺の補足から。

1. ウィリアム・シェイクスピアとは?
16世紀末から17世紀初頭のイギリスで活躍した、史上最高の劇作家・詩人です。

人間の真理を描く天才: 愛、嫉妬、野心、復讐といった、時代を問わない人間の感情を鮮烈に描きました。

言葉の魔術師: 彼が作った造語やフレーズは、現在の英語にも数多く残っています。

私生活の謎: 偉大な名声の一方で、彼の家族や私生活については資料が少なく、多くの謎に包まれています。

2. 戯曲『ハムレット』とはどんな作品?
シェイクスピアの「四大悲劇」の一つであり、世界で最も有名な演劇作品の一つです。

あらすじ: デンマークの王子ハムレットが、父である王を殺し、王位と母を奪った叔父に復讐を誓う物語です。

「生か死か、それが問題だ」: 復讐を果たすべきか、正義とは何かという葛藤に悩み、なかなか行動に移せないハムレットの内面描写が最大の見どころです。

時代を超えた影響: 王道的な「復讐劇」でありながら、哲学的な深みを持っているため、今なお世界中で上演され続けています。

3. なぜ『ハムネット』と『ハムレット』が関係あるの?
ここが映画(および原作小説)の最も重要なポイントです。

実在した息子: シェイクスピアには、**「ハムネット(Hamnet)」という名の息子がいました。しかし、彼はわずか11歳で亡くなってしまいます。

名前の響き: 当時、「ハムネット」と「ハムレット」はほぼ同じ名前として扱われていました。

映画の視点: 『ハムネット』は、息子の死という悲劇が、のちの傑作『ハムレット』にどのような影響を与えたのか、そして残された家族(特に妻のアグネス)がどう再生していくのかを描く、「名作の裏側にあった知られざる家族の物語」なのです。

シェイクスピアに関して知らずとも全然楽しめるのですが、知っているとなお理解が深まる。

クラシックな名作というのが今にも刺さるというのは映画、本を通して間々あることですが、これは本当に刺さりました。

クロエ・ジャオとの相性も抜群に良く、自然美とアグネスの神秘性を良く捉え、見事に表現している。

とりわけその象徴としての森の表現が印象的で、静謐な空間と木々のなまめかしさ。風のそよぐ音や小鳥のさえずり。自然と共にあり、直観が研ぎ澄まされたアグネスという人物像の形成を端的に知らしめる映像表現。

その後も”自然”というものへの優美な表現が頻出するわけですが、これと神秘的なグレーディングがリンクし、マッチしている。

もうこれだけでも見ものなんですよね。

フィックスされた構図というのも美しく、まるで舞台の枠組みを外枠に観るような印象。小道具や美術に動きが無く、人のみが動く演出。この静かで動的なバランスが独特な間合いを生み、映像の美しさに拍車を掛ける。

逆に終盤では一転、舞台上からの構図を置くことにより通常と異なる視点、アグネスや観客にフォーカス視点が挿入され、表情一発でのフィードバックを受け取り、反応が舞台をドライブさせていく。

映像の静けさを補完する要素として、サントラの素晴らしさもあると思っており、手掛けているのはマックス・リヒター。

広大な自然や沈黙、光を大切にするクロエ・ジャオならではの画作りと共鳴し、見事な世界観を構築している。

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1. 「ポスト・クラシカル」の旗手
伝統的なクラシック音楽に、電子音やアンビエントな要素を融合させた「ポスト・クラシカル」というジャンルの第一人者です。
単なる背景音楽ではなく、聴く人の心に直接語りかけるような、ミニマル(反復的)で叙情的なメロディが特徴です。

2. 代表作は「どこかで聴いたことがある」名曲ばかり
映画ファンなら、彼の名前を知らなくても曲を聴けば「あ!」となるはずです。

『メッセージ(Arrival)』: 冒頭とラストで流れる「On the Nature of Daylight」は、映画史に残る名シーンを演出しました。

『アド・アストラ』: 宇宙の孤独を描いた音楽で高い評価を得ました。

『ブリジャートン家』: ヴィヴァルディの「四季」を大胆に再構築(リコンポーズ)した楽曲が使用され、世界中でバイラルヒットしました。

加えて、光へのこだわりも欠かせない。

『ノマドランド』や『エターナルズ』でも見せた、ジャオ監督特有の「マジックアワー(夕暮れ時の自然光)」の美しさは今作でも健在で、16世紀のイングランドを舞台にしながら、セットのような作り物感ではなく、まるでその時代にタイムスリップし、風や光を感じるようなドキュメンタリータッチの映像美にも惚れ惚れする。

暗がりの場面も印象的で、どうやら当時の光を忠実にした映像表現というのに重きを置いて撮影したよう。

なので室内での極端に暗い映像や、窓際の日が差し込む映像など、実際にその場にいたら、という再現性も見どころの一つかと。

そしてなんといっても演者の演技力が凄まじい。

ポール・メスカルは『グラディエーターⅡ』での存在感が印象深く、勇猛でクラシカルな雰囲気が本作とも相性が良い。

ですが、何といってもアグネスを演じたジェシー・バックリーですよ。

彼女の野性味と女性としての佇まい。女性らしさとも異なる、女性の本質に迫るような生物的な演技、表情を主として観客に知らしめるというのは圧巻の一言で、随所に彼女の魂が宿った声なき声がこだまする。

この演技力はただモノではなく、見どころとしての迫力十分。

子役の演技なんかも上手いんですよね。泣けますし、迫真に迫っていて。

物語の骨子として『ハムレット』が内包する人間の生死を左右する葛藤があり、それに解釈を含めた豊かさを伴った生きるということへの探求。

かの有名な「To be, or not to be, that is the question」(生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ)というがどういった経緯から表出するのかというところも感慨深く、誰しもに突き刺さる形として落とし込まれているのもこれが名言たるゆえんなのか。

本作で提示されるその答えの落としどころも軽妙で、明言されるわけでは無いが、要所の散りばめられた真実の断片がその都度心に刺さって抜けずにいる。

何の為に、誰の為に、言葉で語るにはあまりに浅はかな事実と対峙した時、わずかに残る残滓のようなものが物語るのかもしれないと思うと、当たり前などということは存在していないのかもしれない。

クロエ・ジャオ監督『ハムネット』、音響、映像表現含め、余計な事柄が一切ない映画体験。

相性の良さとクラシカルな名作の趣を是非。

では。

『服従』が突きつける逆説:知識は救いにならないのか?

『服従』

2022年フランス大統領選で同時多発テロ発生。。
極右・国民戦線マリーヌ・ル・ペンと穏健イスラーム党党首が決戦に挑む。
テロと移民にあえぐ国家を舞台に個人と自由の果てを描いた傑作長篇
世界の激動を予言したベストセラー。

何に対する服従なのか。

政治に覆われた社会で暮らす人々の思想と迷走に纏わる実生活の如何とは。

まず作者のミシェル・ウェルベックについて。

・どんな作家?

フランス現代文学を代表する挑発型・厭世型の作家。
性愛、孤独、資本主義、宗教、老い、死といったテーマを、
冷笑的・乾いた文体でえぐることで知られています。

「愛なき自由社会は、人を幸福にしない」という一点を、
小説ごとに別の角度から叩き続けている作家とも言えます。

・作風の特徴

・ 性と市場原理を直結させる
・ ロマン主義の完全な崩壊後の世界を描く
・ 主人公はだいたい中年・無力・孤独な男
・ 皮肉・諦念・ブラックユーモアが強い
・ 社会批評と私小説の中間のような文体

「炎上芸」ではなく、冷徹な診断医タイプの作家です。

端的に言って”遠慮のない、無慈悲に現実を捉えた作家”というのが私の率直なところなのですが、本作ではフランスにイスラム政権が誕生し・・・というようなお話。

これが非常に現実的であり、今の世相、現代社会に蔓延る問題をストレートに描写している。

タイミングがタイミングだけに政治というものの持つ力、それに翻弄される人々というのがこうも痛烈に響くものかと。

帯にも書かれている通り、人の知識や博識などといったものはある局面においては全く意味を成さなくなる。

というのもそこにインボルブされるというのが常であるから。

そんな知識の権化のような学者という立場の主人公がシニカルに社会を分析していく様が描かれ、それと並行した世界の宗教的、政治的変容を傍観していく。その秘められたデカダンス的な視点からの信仰による道筋が面白いほど理解でき、同時に狂気的だと思ってしまうような世界の縮図を垣間見るかのよう。

自身でも年とともに老い、肉体的、精神的渇望の源泉が枯渇していくことを思う時、頼りになるのは知識や経験だと思ってきた。

でも、最近ではその力というのも些細なものでしか無く、テクノロジーやそれこそ社会の変革によってあっさりと淘汰されたり、凌駕されたり。

ベースとしてのそれらの必要性は疑うところではないが、それでも真に必要なものというか、自分にとって頼れるものとは何なのだろうと思っていたところだったわけです。

作中に出てくる”信仰”というものの在処、拠り所としての強固さというのは感じて言うところでもあって、人は自分のためにというよりも他人のためにという行為や意思のほうが、信念として曲がり無い力を秘めるというのは薄っすらとではあるものの、認識しつつあったところ。

今の感情や思いというものも現社会にいるから生じることであって、時代変われば、立場変わればというような事柄は今の自分にとっては抜け落ちがちな視点であるのは間違いない。

頭でっかちになり、知恵で武装することより、必要なことは無いのだろうか。

そう考えた時に手を使った”スキル”、デジタル上のそれとは異なるアナログでの技術というのはある種裏切りのない、心理的支えにも成り得るのではないか。

思えば今の日本を見てもそう、アメリカにしろMAGAを提唱しているものの、抜け落ちているのは製造業や電子では無い、実世界で何かを生み出す力が不足しているのではないかと感じていた。

結局デジタルでのそれというのは作中で言うところの知識に相当するものであり、アナログのそれというのはその対極にあるものとも考えられる。

では信仰がそれなのかと言われると、それはまた違うと思っていて、信仰はあくまでも別枠として存在している拠り所のようなもの。

その拠り所に全てが凌駕されてしまうのであれば意味がないと言ってしまうのもそう思うが、その中でサバイブし、ほんとうの意味で自身を信頼たる個として存在させるためには身体を伴ったスキルが必要なのではないか、というぼんやりとした、確信めいたようなものを感じた。

現代には即さないような女性蔑視や宗教観もてんこ盛りなわけですが、そうしたことは実際にあることなわけで、口に出さずとも思っている人が多いということも事実。

背景にあるのは服従する側にも恩恵を受けている構造があるということもあるわけで、一概にどっちがどうと言えることでもないのかもしれない。

それは当事者が判断すれば良いこととしても、資本主義、その搾取する側とされる側という構図が見え隠れするのが確かな世の中にあって、この作品で言う服従というのは何を意味するのだろうか。

出てくるような絵に書いたような服従という意味以上に、無自覚な服従というほうが怖いわけで、誰しもがこちらに加担し、何かしらに服従してしまっているという風に考えた時、本質的な怖さの一端が身近にあることを痛切に感じる。

知識も一瞬で無に帰すように、現在も一瞬に無に帰す可能性がある、当然と思っているものが崩れた時、それでも失わないでいられる為には何が必要なのだろうか。

考える契機としても、今の政治、世界の混沌の中で思うても良いタイミングなのかもしれない。

では。

『アーセナルvsボーンマス』疲労か構造か、崩れ始めたアーセナルの正体

『アーセナルvsボーンマス』

12ギョケのプレスバックからのラン、ええよ
19ライスの判断はマジ鼓舞される
23ラヤ良いとこ通すな
27これ通ったらヤバかったな、ライス

60トラップはピカイチのサーモンからの鬼プレスバック
64この動き大事よ、ギョケ
70エゼの気合い見たわ

最近の状況の結実とでも言うかのような結末。

ここ4試合での勝利は1、その勝利したCLスポルディング戦ですらようやく勝ったという状況を踏まえれば直近の状況は非常に厳しい限り。

一旦スタメン。

スケリーがスタメンで登場。相手フォーメーションも同様のためマッチアップはガチンコでぶつかることは必至という並び。

正直出足からそこまで悪い印象では無かった。

ただ、最終ラインからのパス出しに苦慮する場面が多く見られ、ホワイトの裏を取られるケースも散見されるという。

攻撃的なSBを置き、どちらかが内側に入って、もしくはオーバーラップして3枚で守るというケースも多いアーセナルですので、そこの強度が落ちるとこうなることはわかっていたのですが、今日の試合はそれが目立った。

スケリーも裏ケアが抜群な選手はないわけで、ホワイトが極端に悪いというわけでもなく、こちらからの仕掛けが多かったというのも要因としてはあったのでしょう。

いずれにせよ最終ラインが何だか安定せず、強度を保てず。

ビルドアップにも苦慮していたことを考慮すると選手同士の関係性も良い間合いでは無かったのでしょう。

これも全て疲れなんですかね。

最近毎度この言葉で片付けてる気がするのですが、だとしてもこのタイトルがかかった状況下でそれを全面に出すことは許されないのかと。

そんな中、安定の奮闘をしていたのがライス。

なんですか、このカバーエリアの広さ。

チームメイトからも馬車馬の異名として「The horse」と呼ばれているというのも納得の働きっぷり。

この試合でも局所に顔を出し、危険を防ぎ、攻撃にも再三参加する。

終いには抜群のコーナーを何度も蹴り続けという人ならぬ働きをしてもなお勝てず。

でも、佇まい、姿勢、本当にこの厳しい中で良くやってると思いますよ。素晴らしい。

ダウマンも加勢し、終盤はアーセナルが押し込んでいた試合でしたが、ホームですからね。

ボーンマスが良いサッカーをしていたというのは間違いないですよ。クルーピーもライアンも若くして良いプレーしてましたし、スコットは代表でライスのパートナーとして全然やれるレベルですよ。というか絶好調なのでしょう。

それでもせめてドローで終わりたかった。

次節シティ戦、マジで正念場です。

では。